医療漫画の金字塔ブラック・ジャック。
誕生から40年以上が経ち、現在も根強いファンがいる名作です。
ブラック・ジャックのイメージといえば天才外科医、無免許、黒ずくめの服装、高額な医療費…といった様々なものがあります。
彼は幼い頃に不慮の事故に遭いますが奇跡的に助かり、それを機に医師を志したという過去があります。
ブラック・ジャックの過去は作中で断片的に描かれてはいるのですが、詳しくは描写されていません。
そんな天才が医学生だった頃どのようにして過ごしていたのか…それにフォーカスした作品が、これから紹介するヤング ブラック・ジャックです。
ヤング ブラック・ジャックとは
2011年から2019年まで連載され、巻数は全16巻。
連載当時の時代背景をベースに、間黒男(後のブラック・ジャック)の少年~医学生時代を描いたリメイク&オリジナル作品です。
2011年に岡田将生さん主演で放送されたSPドラマとは無関係です。
魅力① 公式設定と思わせてしまうような独自の解釈
(引用:ヤングブラック・ジャック1(ヤングチャンピオンコミックス))
この作品では、黒男はどのようにして医師免許が剥奪されたのか、彼の神業ともいえる医療技術は最初からだったのか、といった部分が独自の解釈で描かれています。
例えばブラックジャックの神業ともいえる手術スピードについて。
原作では学生時代から医局の天才と呼ばれていたことが明らかになっていますが、その技術はどこで身につけたのか。元々才能があったのか。
(引用:ヤングブラック・ジャック4 (ヤングチャンピオンコミックス))
この作品では黒男が学生時代から動物などに対して医療行為をしていたという設定が付与されています。
中学生の頃には傷を負った犬の傷口を縫って治療したり、医学生のときには勉強の傍ら牛や豚などを使い手術の練習をしていたそうです。
またそれ以外にも
・医学生ながら医療行為を行っていたことで同年代の医師よりも経験値が高い(若いながら『天才』であることの理由付けがなされている)
・母の治療代として3億円の借金を背負った設定が付与されたことが、高い治療費を貰うようになるきっかけに繫がっている(『命の重さ』『治療したい覚悟』を依頼者から感じ取るスタイルの確立)
・天才的な腕前を持つために、医学生ながらCIAや裏社会の目に止まる
など、本名を捨ててブラック・ジャックを名乗るまでに至る背景が綺麗に描写されているんですね。
これが公式設定なのでは!?と思わせてしまうほどの構成力。
魅力② 原作準拠のエピソード
こうしたオリジナルのエピソードしか無いのかと思いきや、ちゃんと原作準拠の話もあります。
黒男の初恋を描いためぐり合い、好物であるボンカレーについてを丸々一話使って描いた回、恩師本間先生が黒男の体内にメスを置き忘れた手術ミスを回想するエピソードなど、原作を読むことで更に深みを増す話もあります。
(引用:ヤングブラック・ジャック2(ヤングチャンピオンコミックス))
そして原作の人気キャラである若かりし日のドクターキリコ(当時はキリーという名称)も登場。
医学生の黒男と、軍医として働いていたキリコ。お互い名前も知らない状態である2人の邂逅が描かれています。
またキリコが主役のエピソードもあり、安楽死専門医になるまでの過去を想像させるような話になっています。
そして原作でも登場していた、小学校の同級生であるロックも後半に登場。
原作でのエピソードが久々の再会となりますので、この作品内で二人は出会うことはありません。
そのあたりも時系列が徹底されていますね。
しかし取り上げられなかった話もあり、黒男がダーツを必死に練習している時に出会った友人ゲラとのエピソードや、顔の皮膚を移植してくれたタカシのエピソードは描かれませんでした。
この2つはどうしても取り上げてほしかったので、そこは残念なポイントです。
せめて連載がもう2~3巻分ほど続いていれば…!
(ゲラのみ、1コマだけ登場しています)
魅力③ スターシステムと、現代風リメイクの絵柄
本作では原作と同じくスターシステムが取られ、黒男のクラスメイトからモブキャラに至るまで手塚作品のキャラが数多く登場します。
黒男の借金取り・立川ことランプ、黒男の医大時代にお世話になった百鬼先生こと百鬼丸…と行った面々が隅々まで登場。
コミックスの巻末には特典としてキャラクター紹介のページも付いているので、どの作品の登場人物か分かるようになっているのも手塚作品へのリスペクトを感じさせます。
(引用:ヤングブラック・ジャック2(ヤングチャンピオンコミックス))
そして何といっても絵が綺麗!
作画担当の大熊ゆうご先生による美麗イラストは、読む者を虜にします。
ちなみに大熊先生はヤングブラックジャックのイラスト集も出していますので、大熊先生のファンになったという方はそちらも是非チェックしてみてください。
(引用:ヤングブラック・ジャック1(ヤングチャンピオンコミックス))
ちなみに作中の超美形間黒男。
何頭身なんだ。
先ほども書きましたがヤングブラック・ジャックは取り上げられなかった原作エピソードがいくつかあり、それらが連載されなかったのが実に惜しい作品です。
原作では連載終了後にも何度か少年チャンピオン誌上にて続きが掲載されたケースがありましたので、この作品もそのように足りない話や続きを書いて欲しいなと思います。
『ヤングブラック・ジャック』は原作が好きな方・手塚作品が好きな方はコマの隅々まで楽しめる作品です。
気になった方は是非読んでみてください。
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